同人活動の思い出/行方不明の紙原稿たち

私は、アンソロや合同誌のゲスト原稿を頼まれて描いたものの、主催者が逃亡して本が発行されなかったという経験が何回かあります。同人活動をしていたら必ず一度は遭遇する定番のハプニングだと思っていたのですが、実際はどうなのでしょうか?

複数人で作るアンソロや合同誌は、もし誰かのせいで発行中止になれば、参加者全員に迷惑がかかります。一部の参加者だけの問題なら発行自体が中止になることはなかなかありませんが、もし肝心の主催者が途中で面倒になってしまったり、ジャンルに飽きてしまったり、印刷代などのお金が用意できなかったりして、そのまま逃亡したらどうなるでしょうか?

人並みの責任感を持っている人なら「そんなことあるの!?」と驚くかもしれませんが、仕事ではない趣味の活動ですし、主催者が必ずしもマトモな人とは限りません。ジャンル内で目立ちたくて主催したけれど、思っていたより大変で途中で放り出すケースなんていくらでもあります。

昔はアナログ原稿だったので、主催者に原稿を渡してそのまま持ち逃げされ、コピーも取っていなかった場合、その原稿は闇に葬られるしかありませんでした。私も頑張って描いたアナログ原稿が何度か行方不明になりましたが、逃亡した主催者に対しては仕方がないと諦めて終わりました。

同人の交流は、かなり仲良くしていても相手の本名は知らないなんてこともよくありますし、どんなに連絡を取り合っていても本当の個人情報は案外明かしていないことが多いです。
だから、いざとなれば逃げるのは簡単です。とくに主催だけして絵を描いていない人や、ありふれた画風の人なら、名前を変えて別ジャンルに行けばもう分かりません。

逃げられた側も、精神的な被害は大きいけど金銭的な被害はほぼ無いので、そこまで無理をして追いかけようとする人はほとんどいません。私も、原稿を出したのに本が発行されず、主催者から連絡が来ないと気付いた時点で「ああ、そうか」と静かに納得していました。

アンソロや合同誌に限らず、企画の主催者というのはどう考えても絶対に大変なものなので、私自身はやる勇気がありませんでした。だから、主催を引き受けてやり遂げてくれる人のことは尊敬していましたが、たまには残念な事例もあるという話です。

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